毎年7月に実施する社会保険の「算定基礎届(定時決定)」とは?

投稿日:2025.06.16

社労士オフィスろーどの小林です。

今回は、企業で毎年6月~7月頃に提出する「算定基礎届(定時決定)」についてご説明させていただきます。
算定基礎届(定時決定)とは何のための手続きなのか、どのような計算が必要なのか、基本的な知識となりますが、参考までにご覧いただけますと幸いです。


算定基礎届(定時決定)の目的

算定基礎届(定時決定)とは、4月~6月に支払われた報酬月額から「標準報酬月額」を決定し、実際の給与に見合った社会保険料を算出するための手続きです。

算定基礎届で決定した標準報酬月額によって、毎月給与から控除される健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料(社会保険料)が決まります。

また、従業員の標準報酬月額は、将来給付される年金額や、心身を患ってしまった時の傷病手当金額の基準となるもののため、重要な届出となります。


「標準報酬月額」の決まり方

標準報酬月額が決まるタイミング

前述の通り、標準報酬月額が決まることで、毎月の給与から控除される社会保険料等が決まりますので、標準報酬月額の決定と改定は非常に重要となります。

標準報酬月額が決定・改定されるタイミングは、以下の4つです。

①社会保険の被保険者資格取得時(入社時など)
②定時決定(毎年実施する、算定基礎届による決定)
③随時改定(固定給の昇給・降給の際に行われる改定)
④産前産後休業・育児休業等終了時

なお、今回のテーマである算定基礎届(定時決定)とは異なる手続きですが、③随時改定(月額変更届)についても以下に少し説明させていただきます。

随時改定とは、従業員の固定給の昇降があり、標準報酬月額が2等級以上の変動があった際に「標準報酬月額変更届」を提出し、随時標準報酬月額を改定する手続きです。
基本給や役職手当等の固定給に変動があった場合のため、一時的に残業代が多くなった等の一過性の報酬月額の変動は含まれません。

こちらは算定基礎届(定時改定)よりも前に行われることがあります。その場合、随時改定された標準報酬月額が優先されますので、注意が必要です。

随時改定の詳細については、年金事務所のホームページにてご確認ください。
👉https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-02.html

標準報酬月額の対象となる報酬

標準報酬月額の対象となる報酬は、労働者が労働の対価として受けるすべてのものを含みます。金銭(通貨)に限らず、 通勤定期券、食事、住宅など現物で支給されるものも報酬に含まれます。

以下が対象となる報酬、対象とならない報酬の例になります。

出典:日本年金機構 「算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和7年度)」
👉https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/santei.guide.book.pdf

算定基礎届(定時決定)による標準報酬月額の計算方法

標準報酬月額は、4月~6月に支払われた報酬の平均額(報酬月額)によって算出されます。

〈例〉給与は20日締め/月末払い 基本給30万円/通勤手当4,200円の正社員

① 4月~6月に支給された報酬となる賃金を計算する
4月 30万円+4,200円=304,200円
5月 30万円+4,200円=304,200円
6月 30万円+4,200円=304,200円

② 支払い基礎日数が、17日未満の月を除いて合算する 
支払い基礎日数とは、報酬の支払い対象となった日数です。
月給制の場合は、出勤日数に関係なく暦日数になりますので、給与計算期間と考えていただけるとわかりやすいかと思います。
ただし、欠勤日数分だけ報酬が差し引かれる月給日給制の場合は、会社の所定労働日数から欠勤日数分を控除した日数となります。

今回の給与の例ですと20日締めですので、欠勤なく出勤した場合ですと、

4月給与の支払い基礎日数 → 3月21日~4月20日のため、31日
5月給与の支払い基礎日数 → 4月21日~5月20日のため、30日
6月給与の支払い基礎日数 → 5月21日~6月20日のため、31日

このような数え方となります。

③ 支払い基礎日数が17日以上の報酬を月数で割り、報酬月額を計算する
(304,200円+304,200円+304,200円)÷3ヶ月(4月~6月)
報酬月額 304,200円

ここで算出された報酬月額を、各都道府県別に発行されている「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」の金額に当てはめることで、標準報酬月額が決定し、社会保険料が算出されます。

なお、今回の例の場合、標準報酬月額は300,000円となります。

出典:全国健康保険協会 「令和7年度保険料額表(静岡)」
👉https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r7/ippan/22shizuoka.pdf

実際の算定基礎届に、従業員一人分の支給月(4月~6月)、日数(支払い基礎日数)、通貨(報酬となる賃金)等を記載すると以下のようになります。

出典:日本年金機構 「算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和7年度)」
👉https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/santei.guide.book.pdf

今回は正社員の例で計算いたしましたが、パートタイマーやアルバイト等の短時間就労者や、特定適用事業所等に従事する短時間労働者の場合、支払い基礎日数は実際の出勤日数(有給休暇含む)で算出されます。

詳しい計算方法は、日本年金機構にて公開されている「算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和7年度)」のP.4~P.5、P.8~P.13をご参照ください。
👉https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/santei.guide.book.pdf


算定基礎届(定時決定)を届出すべき従業員は?

算定基礎届の対象となる従業員は、7月1日時点で社会保険の被保険者となる従業員です。

企業に送付される届出書には、5月19日時点の被保険者の情報が印刷されています。5月19日以降に入社した従業員がいる場合には、従業員情報の追記が必要となります。

また、出勤率の低い育児休業・介護休業・病気療養中の従業員も対象になります。こちらは前章でご案内した計算方法ではなく、前年の標準報酬月額が引き継がれる形となります。

なお、以下の従業員様は、算定基礎届の対象となりません。

①6月1日以降に社会保険の資格取得をされた従業員
②6月30日以前に退職した従業員
③7月の随時改定に該当する従業員
④8月~9月に随時改定する旨を届出している従業員

①に関しましては、6月1日以降の入社時に「社会保険資格取得届」を届出し、標準報酬月額が決定した場合、翌年の8月まで有効となるため、算定基礎届は不要となります。

③④に関しましては、先に説明したように、算定基礎届(定時決定)より先に随時改定が行われていた場合、随時改定が優先されるため、算定基礎届からは除外いたします。


社会保険料が変更となるタイミングは?

年金事務所で届出の処理が完了した後、7月中旬頃より順次「標準報酬月額決定通知書」が郵送されます。
算定基礎届(定時決定)の場合、当年の9月分(翌月徴収のため、10月給与)の保険料から社会保険料が変更となります。賃金情報の更新時期にご注意ください。



終わりに

算定基礎届の年金事務所への提出期限は、7月1日~7月10日(10日が休日の場合は、翌営業日)です。
6月のうちに従業員の賃金情報等を整理し、7月の提出に間に合うように備えましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

小林 沙貴

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