顧問先様を中心に業務の生産性向上についての御相談を頂きます。大まかに言うと以下のような相談内容です。
・目的のない会議が多い。情報共有だけであれば情報共有ツールを活用した方が無駄な時間を減らせる。
・打合せ場所に行く時間とお金がもったいない。オンラインを活用してコストを削減したい。
・働き方改革により時間外労働の上限規制もあるので生産性を高めて、残業時間を減らしたい。
・アナログな方法で作業をしていて非効率である。システム等を導入して作業時間を短縮したい。
このように整理してみると「時短」に関するものが多いのが分かります。これらは具体的な解決手段は見つけやすく、ネットや書籍で探せば、いくらでも有効な手段を見つけることができます。私も情報提供をし、場合によっては伴走支援をさせて頂くことで、一時的に時短という成果を確認することはできます。しかし、サポートを通して分かってきたことがあります。それは時短を目指した取組は生産性向上の本質ではないということです。そう考えた理由を説明させて頂きます。
そもそも生産性とは、投入した資源(インプット)に対して得られる成果物(アウトプット)の量の比率で、以下の式で表すことができます。つまり、分母である投入資源(インプット)を減らし、分子である得られる成果物(アウトプット)を増やしていくのが、生産性向上の取組と言えます。
■生産性の式 生産性 = アウトプット/インプット
時短はインプットを減らす取組ですから、生産性の向上に確実に貢献するように思います。しかし、実際には生産性向上に至らないケースが少なくないように感じています。私はその原因を時短に取り組む大義(目的)がないからだと分析しています。
会社や組織に成し遂げたい大義(目的)や志がある場合は、無駄な時間を省いて重要な仕事に注力することが必要になりますから、時短(インプットの削減)は継続され、アウトプットが高まり、結果として生産性の向上を達成することができます。
一方で、時短すること自体が目的化してしまうと、時短することが大義となります。このケースはとても危険です。何でも簡素化すれば良いと表面的な改善が進み、コミュニケーションが不足し、社員同士の信頼関係が揺らいできます。そうなると当然ですがアウトプットは低下します。そして、そんな状況下での時短の取組は不安定になりますので、ミス、二度手間、コミュニケーションエラーが頻発し、インプットは減るどころか増えてしまうわけです。
改めて大義(目的)を掲げて仕事をすることの大切さを痛感します。人間は大義がなければ努力を継続することが難しい生物だと思います。心の中から大義が生まれてくるように、日々の習慣に気をつけてまいります。