言志四録(げんししろく)は、江戸時代に佐藤一斎先生が塾長として講義をする隙間の時間を使って約40年かけて書き上げられたと伝わります。
内容は学問、思想、人生観など多義にわたり、よりよく生きる心得が1133条にわたって書かれた随想録です。「言志録」「言志後録」「言志晩録」「言志耋録(てつろく)」の全四巻を総称して言志四録と呼ばれます。
言志四録が刊行されたのは1850年頃ですから、170年程が経過しました。
現代は「いかに働き、どう生きるのか」ということを学び、考える機会はほとんどないように思います。しかし、二度とない人生を悔いなく、豊かなものにするためには、この根本的なテーマに向き合う以外には道はないように思います。
言志四録は、複雑で生きにくい現代を生きる私たちに、本質的な学びを与えてくれる書物です。大変恐縮ながら本日も章句をご紹介させて頂きます。
【章句】
信を人に取ること難し。人は口を信ぜずして躬(み)を信じ、躬(み)を信ぜずして心を信ず。ここを以て難し。
【訳】
人から信用を得ることは大変難しいことである。なぜなら、人は言葉を信じないで、その行いを信じるからである。さらにいえば、行いではなく、その人の心を信じるからである。だから、信用を得るといういのはそれほど簡単なことではない。
以下は、章句から学んだ私の考えです。
「信」という字は、人と言という字が組み合わさっています。その字が表しているように、発言した通りに実行すれば、人から信用を得ることができます。反対に言っていることと、やっていることが違えば、その人は信用を失います。簡単なことではありませんが、信用を得るための原理原則はシンプルであり、有言実行を目指すことです。
そして、私のような未熟者には到底及ばない領域ですが、必ずしも「言」が必要とは限りません。言葉には出さず、正しいことを黙々と実行できる心の持ち主(不言実行)になれたら、さらに素晴らしいことなのかもしれません。
人が信用を得るためのポイントは実行できているかどうかです。私は実行ができていれば、有言実行でも不言実行でも、その人に合った方法を選択すれば良いのではないかと考えます。大切なのは言葉だけにならないこと。そうならないよう精進あるのみです。