よく経営者から、「うちの社員は言われたことしかできない」、「もっと社員にやる気をもって仕事をしてほしい」、「社員が主体的に仕事をするように研修をしてほしい」という類のご相談を頂きます。
私も経営者の端くれとして、このような経営者の気持ちは痛いほど分かります。私も自社で日々試行錯誤をしていますし、顧問社労士の立場として、他社様の課題にも真摯に向き合い続けています。
そのような現場の実践を通して、社員のやる気を引き出すためのポイントが少しずつ分かってきたように感じています。今回はそのことを整理して、3つのポイントとしてお伝えさせて頂きます。
ポイント1/トップの考え方・姿勢
何よりも重要な1つ目のポイントは、トップの考え方・姿勢です。
どれだけ優秀でやる気に溢れた社員が入社したとしても、トップに私心が強く、放漫な経営をしていれば、1年もしない内に、その社員は会社に対しての敬意や信頼はなくなり、一生懸命に働くのが馬鹿らしくなるのが通常だと思います。
このような社員のやる気を変えたいというわけですから、答えはシンプルで、そのためにはまずはトップが変わらなくてはなりません。未熟極まりない私ですが、意識して実践していることを以下に記します。
- 社員の誰よりも働く。
- 毎朝、社員と一緒に掃除をして経営理念を唱和する。
- 社員を家族だと思う。家族だと思えない人は採用をしない。
- 数字(売上や利益等)は隠さない。月に1回の会議で月次の収支を共有する。
- 月に1度、自分が講師役となり、経営理念や行動指針について、理解を深めるための研修を実施する。
- 自らの心を高める。(古典や致知等の書籍から学ぶ。稲盛経営12ヶ条についての講演録を繰り返し聞く。尊敬できる人と出会ったら話を聞きにいく等)
ポイント2/安心して働ける職場環境をつくる
社員のやる気を引き出すためには、安心して働ける環境が必要だと考えます。これをつくりあげるためには、1つ目のポイントであるトップの考え方・姿勢が必須条件です。
トップが一人ひとりを信頼し、互いに助け合う社風をつくろう!という考え方で取り組めば、思いやりのある職場になっていきます。
反対にトップが、個々の社員を目標で縛り、互いに競い合わせて成果主義で評価しよう!という考え方で取り組めば、人を引きずりおろしてでも、自分が勝とうとする殺伐とした職場になっていきます。
綺麗事を言いたいわけではありません。仕事は競争の世界であり、食うか食われるかの修羅場です。だからこそ、できる限り人間関係等のつまらない心配事が起こらない環境をつくり、やるべき仕事に集中して協力できる職場にすることが大切だと考えているわけです。すぐには成果は表れないかもしれませんが、中長期的な視点でみれば、安心して働ける職場環境への取組は、経営成績、顧客満足度、離職率等にプラスの効果を与えると確信しています。
ポイント3/社員が求めているものを理解し、応援する。
経営者は「どうしたら社員が動いてくれるか」といった視点で考えることが多く、一方通行な動機付けや取組が多いように感じています。少し視点を変えて、「どうしたら社員が動きたくなるだろうか」と考えると、その答えは、社員に聞いてみなくてはわからないことに気がつきます。
社員は一人ひとり、色んなことを考えながら働いています。それは、自分の将来のこと、家族のこと、健康のこと、お金のこと、プライベートなこと、会社のこと等です。まずは、その社員が何のために自社で働いているのか、その目的を正しく理解することが重要だと思います。目的は日々変わります。私はこの変化に気づき、社員とより良い協力関係を築くために、月に1回の個人面談を行っています。
面談を通して、社員が求めているものを理解することができます。内容にもよりますが、私はその社員個人の願いを叶えられるよう、できる限り会社で応援をしていきたいと考えています。社員に「会社は自分のことを理解して、応援してくれている」という気持ちになってもらうことを大事にしています。
私はその美しい心から、「会社のために働こう!」というやる気という力が自然と湧いてくるものだと信じています。甘いと思われる経営者も多かろうと思いますが、ブレることなく貫いていこうと思います。
大変僭越ながら、社員のやる気を引き出すための3つのポイントをお伝えさせて頂きました。
お読み頂きありがとうございました。
大道 和哉