「労働保険年度更新」の概要と申請の流れ ~社会保険労務士事務所がわかりやすく解説~

投稿日:2024.06.23

社労士オフィスろーどの千葉佳汰です。

今回は「労働保険年度更新」がテーマとなります。
1年に1回、従業員を雇用している事業所は必ず実施しなければならない「労働保険年度更新」の概要と、申請までの流れを説明させていただきます。

「労働保険年度更新」とは?

労働保険とは?

そもそも労働保険とは、雇用されている労働者の労働に関する保険制度のことで、「雇用保険」と「労災保険」の総称のことを労働保険と言います。

雇用保険」とは、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに再就職の援助を行うことなどを目的とした雇用に関する保険で、「失業手当」などが雇用保険によって給付される代表例です。

また、「労災保険」とは、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、労働者の福祉の増進を目的とする保険で、病気やケガをした際に給付される「療養保障給付」などが代表的なものになります。

出典:厚生労働省「労働保険制度について

労働保険の年度更新とは?

事業所・従業員ともに安心して労働するために、保険料を計算して支払いを行う手続きを「労働保険年度更新」と言います。

事業所の事業主の方は、毎年6月1日~7月10日の期間に労働保険料を申告し、保険料を納付する必要があります。
この申告をしないと、法的に罰則が科されることや、事業所も従業員も適切な保険給付や手当を受けられなくなってしまう恐れがあります。

「概算保険料」と「確定保険料」

労働保険料は、年度ごと従業員様に支払った賃金総額によって、支払うべき保険料が決まります。

正確な保険料を納付するために、労働保険料には「概算保険料」と「確定保険料」の2種類があり、それぞれを計算して求めます。

「確定保険料」は、当年度に実際に支払った賃金総額を基に算出した、確定した保険料となります。
「概算保険料」は、前年度の賃金総額を基に算出した概算の保険料となります。

労働保険制度の詳しい内容は、以下をご参照してください。
👉「労働保険制度(制度紹介・手続き案内) |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

労働保険料(確定保険料)の計算方法

労働保険料を計算するためには、事業所ごとに(1)雇用保険料(2)労災保険料(3)一般拠出金の3つの保険料を算出する必要があります。

今回は例として、『賃金総額5000万円(年収500万円の従業員が10人在籍)の飲食業を営む事業所』の設定で計算をします。 算出方法を以下に説明していきます。

(1)雇用保険料

前年度の4月1日〜3月31日の期間に労働者に支払った賃金合計額に対して、事業の種類に応じた雇用保険料率を乗じます。
雇用保険料率はこちらから確認できます。

【計算例】
賃金総額:5000万円
雇用保険料率:15.5%
 → 5000万円 × 0.0155 = 雇用保険料 : 77万5千円

(2)労災保険料の算出方法

前年度の4月1日〜3月31日の期間に労働者に支払った賃金合計額に対して、事業の種類に応じた労災保険料率を乗じます。
業種別の労災保険料率はこちらから確認できます。
👉「労災保険率について」(厚生労働省)

【計算例】
賃金総額:5000万円
飲食店の労災保険料率:3%
 → 5000万円 × 0.003 = 労災保険料 : 15万円

(3)一般拠出金の算出方法

「一般拠出金」とは、石綿(アスベスト)健康被害者の救済費用に充てるため、事業主が負担するものです。

前年度の4月1日〜3月31日の期間に労働者に支払った賃金合計額に対して、一般拠出金率を乗じます。一般拠出金は事業の種類に関わらず、一律の料率(令和6年現在:0.02%)となります。

【計算例】
賃金総額:5000万円
一般拠出金率:0.02%
 → 5000万円 × 0.0002 = 一般拠出金 : 1万円


(1)~(3)で求めた合計金額を合算すると、「確定保険料」が算出されます。
(1)雇用保険料:77万5千円
(2)労災保険料:15万円
(3)一般拠出金:1万円
     ↓
 「確定保険料」: 93万5千円

算出した確定保険料を、保険料申告書の以下の部分に記載していくことになります。

確定保険料の金額が算出できれば、そのまま「概算保険料」の金額も確定できます。
これで申請できる準備が完了します。

おわりに

労働保険年度更新は6月1日~7月10日までの期間で申告と納付を行うために、正確な賃金額を把握し、年度ごとに異なる保険料を計算することが重要となってきます。

社労士オフィスろーどでは、労働保険年度更新時期が近づいてくると、申請が円滑に進むよう事前に事業所様に届く申告書のご提供や賃金情報のご提供をお願いしております。
正確な保険料を算出するためにも、前年度の賃金を早めに計算しておくことで申請を円滑に進めることができます。

複雑な手続きも多いため、ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

千葉 佳汰

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