
社労士オフィスろーどの鈴木です。
今回は事業所が実施すべき「健康診断」について説明させていただきます。
健康診断の概要
従業員は、健康診断を受診することで自身の健康状態を把握することができ、病気の予防、または病気の早期発見・早期治療に繋げることができます。
そのため、従業員には会社が行う健康診断を受診する義務があります。
そして会社は、従業員の心身の健康管理を行うことで、労働災害を防止し、安全で円滑に業務を遂行することができます。
そのため健康診断は、会社の規模にかかわらず、全ての会社に実施義務があり、実施しなかった場合には、50万円以下の罰金に科せられる場合があります。
健康診断の種類
事業者に義務付けられている健康診断には、以下の5種類があります。

今回はこちらの中から抜粋して、「雇入時の健康診断」と「定期健康診断」について概要を説明いたします。
① 雇入時の健康診断

新たに雇用した従業員様に対して実施される、「雇入時の健康診断」について説明します。
対象となる方
雇入時の健康診断の対象労働者は、「常時使用する労働者」になります。
ここでいう「常時使用する労働者」とは、以下の条件を満たしている従業員になります。
・正社員
・パートや契約社員で、契約更新により1年以上の雇用継続が見込まれる従業員
・パートや契約社員で、契約更新により1年以上すでに雇用実績がある従業員
・特定業務従事者(有機溶剤業務を行う従業員や深夜に仕事をする従業員)は6ヶ月以上雇用が見込まれる従業員
・1週間の労働時間が「正社員の4分の3以上」労働している従業員
例)正社員の1週間の所定労働時間が40時間の場合、30時間以上働く従業員が対象。
実施のタイミング
従業員を雇い入れる直前、または直後に実施する必要があります。
ただし、雇い入れた従業員が入社前3ヶ月以内に雇入時の健康診断と同じ内容の健康診断を受けている場合においては、実施する必要はありません。
健康診断の内容
「雇入時の健康診断」では、全部で11項目の内容の検査を実施する必要があります。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロー ル、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
② 定期健康診断
すでに事業所に勤めている従業員に対して実施される、「定期健康診断」についてご説明します。

対象となる方
健康診断の対象労働者は、雇入時の健康診断と同様に「常時使用する労働者」になります。
実施のタイミング
従業員の健康状態にかかわらず、前回の健康診断から1年以内に実施が必要です。
健康診断の内容
「定期健康診断」では、全部で11項目の内容の検査を実施する必要がありますが、
色付けした内容に関しては、医師が必要でないと認めた場合に省略が可能です。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査、及び喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロー ル、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
健康診断実施後の取組み
事業者は、従業員の健康診断受診後に、以下5点を実施する義務があります。
■健康診断結果の通知
→健康診断の結果を受診者全員に文書で通知する義務があります。
ただし、本人が受診結果を病院から直接受領した場合には、企業から受診者に通知する必要はありません。
■健康診断結果の保存
→健康診断結果について健康診断個人票を作成し、各健康診断によって定められた期間、保存する義務があります。
■定期健康診断結果報告書の提出
→常時労働者が50人以上いる事業所では、保存に加えて「定期健康診断結果報告書」を作成し、所轄の労働基準監督署へ提出する必要があります。
■医師等からの意見聴取と保健指導の実施
→健康診断の結果、異常所見が認められた従業員がいた場合、企業は健康維持のために必要な措置について、産業医その他の医師の意見を聞く義務があります。
■健康診断結果にもとづいた事後措置の実施
→健康診断の結果をもとに、従業員が問題なく業務に就くことができるか、医師の就労判定が行われます。
就労判定によって、医師が必要と判断した場合、事業所は、当該従業員の労働時間の短縮や就業場所の変更などの措置を講じる義務があります。
おわりに
定期的に健康診断を実施することは、従業員の健康状態を維持・改善することになり、その結果、業務の生産性の向上にも繋がってきます。
普段働いていると、自主的に健康診断を受診する機会を確保するのは難しいため、制度を受ける側としても、改めてとても良い制度だと思いました。
また、その健康診断を失念せず定期的に実施するための期日管理や、受診先の選定など、会社として仕組みをつくっておくことが大切だと感じました。
何かご不明な点などございましたら、社労士オフィスろーどまでお問い合わせください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

鈴木 智香





