年金を受け取りながら働く高齢者が知っておくべき「在職老齢年金制度」とは? 〜社会保険労務士事務所が分かりやすく解説〜

投稿日:2026.04.12

社労士オフィスろーどの大竹です。

少子高齢化や平均寿命・健康寿命の延長が進み、年金を受給しながら働く高齢者の方々が増えています。
内閣府が実施した令和6年の世論調査によると、「何歳まで仕事をしたいか」という意向調査において、65~69歳の方のうち、約6割が66歳以降も働き続けたいと回答しています。
また、企業の人手不足も深刻化している中で、高齢者の活躍を求める世の中のニーズも今後ますます高まっていくことが予想されます。

今回は、年金を受給しながら働く高齢者が知っておくべき「在職老齢年金制度」の概要と法改正について、紹介いたします。

在職老齢年金制度とは?

出典:厚生労働省「働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます」
👉 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.files/zairo.pdf

在職老齢年金制度を一言で説明すると、「収入が多い高齢者がもらえる年金額を調整する制度」です。
収入の多い高齢者の方には「年金制度を支える側に回っていただく」という考え方です。

働きながら「老齢厚生年金」を受給している場合、「賃金」と高齢者が受給する「老齢厚生年金」の合計額に応じて、年金額が調整される仕組みとなっています。

2026年4月より年金調整が始まる上限額が「65万円」に引き上がります

出典:厚生労働省「働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます」
👉 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.files/zairo.pdf

在職老齢年金制度は、現役引退後の生活を保障するという年金の目的を守りつつ、あわせて高齢者の方の就労意欲を抑制しないようにすることを目的とした制度であるため、年金額の調整が始まる収入の限度額は社会情勢等により見直されます。

これまでは「賃金」と「老齢厚生年金」の合計額が月51万円を超えると、受け取れる年金額が減額されていましたが、令和8年4月からはその基準額が「月65万円」へと引き上がります。

年金を受給しながら働く高齢者の方々を働きやすくすることが、本改正の狙いです。

年金の減額(支給停止)の算出例

ここからはもう少し詳しく、在職老齢年金制度について説明いたします。

前述の通り「賃金」と「老齢厚生年金」の合計額が月65万円を超えると、受け取れる年金額が減額(もしくは支給停止)となりますが、この「65万円」に達しているかどうかは、以下3つを合計した金額で確認します。

① 標準報酬月額(1ヶ月のおおよその賃金月額)
② 賞与を月額換算した額(過去1年間の標準賞与額の合計÷12)
③ 老齢厚生年金(月額)

例としてこの①〜③に金額を入れて確認してみると、以下のようになります。

<例:Aさん(67歳/会社員)>

① 月45万円(標準報酬月額)
② 年120万円(標準賞与額の合計÷12) =月10万円
③ 月15万(老齢厚生年金の受給額)
   ↓
 合計:70万円

この場合、Aさんは基準額の65万円を「5万円」超えてしまっているため、年金は減額となります。
ただし5万円全額が減額になるわけではありません。超過した額の「半額」が年金から減額される金額となります。

超過額5万円 × 1/2 = 25,000円(年金支給停止額)


上記の内容をまとめると、年金停止額は以下の方法で算出します。

上記①〜③合計額 ― 65万円(上限額) ×  1/2(半額) = 年金支給停止額

前述した計算例と用いている金額は異なりますが、在職老齢年金制度を図で説明すると、以下図の通りとなります。
この度の基準額の改正と合わせてご確認ください。

出典:厚生労働省「働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます」
👉 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.files/zairo.pdf

在職老齢年金制度に関するよくある質問

Q1.会社で働く高齢者は全員対象となる?

いいえ、対象は限定されています。

厚生年金保険に加入して働き、老齢厚生年金を受給している高齢者の方のみ対象となります。
いわゆる「会社員として働きながら年金を受けている人」のみ対象となります。
自営業者や短時間労働で社会保険に加入していない方などは、在職老齢年金制度の対象外となります。

また、在職老齢年金の計算や支給停止に関係するのは「老齢厚生年金」のみです。
「老齢基礎年金(国民年金)」に関しては、在職老齢年金の年金額や支給停止額には含めませんので、就労により影響を受けることはありません。

Q2.支給停止となった年金は、将来返ってくるの?

戻ってきません。

支給停止された老齢厚生年金は、後から受け取れたり、繰り下げで増えたりといった扱いにはなりません。
そのため、高齢者の方にとって在職老齢年金は、ご自身の働き方を検討するための重要な制度です。

Q3.何か必要な手続きはある?

特別な手続きは必要ありません。

厚生年金保険に加入する際に提出する資格取得届や、標準報酬月額を改定するための算定基礎届、賞与支払届などの情報をもとに、日本年金機構が判断をします。

おわりに

本記事では、在職老齢年金制度の仕組みや支給調整の考え方、法改正の内容について簡単に説明させていただきました。

在職老齢年金制度は、働く高齢者様の就労意欲を損なわないようにしながら、一定以上の収入がある場合には年金を調整するというバランスの上に成り立っています。
高齢者の就労を促進しつつ、年金制度の目的を果たすという両立を目指した制度であり、高齢者全体の多様な働き方や生活を支える役割を担っています。

一方で、冒頭に述べた通り、少子高齢化や平均寿命・健康寿命の延長、企業の人手不足の深刻化を背景に、高齢者様の活躍はこれまで以上に重要となっています。
そのため、在職老齢年金制度についても「就労をより後押しする方向」での見直しが今後も検討されていく可能性があります。

企業としても、「働くと年金がもらえないのではないか」などといった高齢従業員様の疑問や不安を解消し、安心して働き続けられる環境づくりが求められます。
在職老齢年金制度の内容を理解し、相手の目線に立って丁寧に説明をすることは、高齢従業員様の定着等にもつながる重要なポイントになると思いますので、本記事をぜひご活用頂けますと幸いです。

今後も制度改正の動向に注目し、皆様にご案内できるよう努めてまいります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


大竹 岳

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