知っておきたい!割増賃金の基本と計算方法 ~社会保険労務士事務所がわかりやすく解説~
投稿日:2026.09.13

社労士オフィスろーどの植松です。
今回は、時間外労働・深夜労働・休日労働など、割増賃金の基本と計算方法について、ご紹介します。
まず、割増賃金の基本と割増率の一覧は以下の通りです。

ここからは、1つずつの項目について解説していきます。
時間外労働(法定時間外労働)
労働基準法では、原則として1日8時間、1週40時間を法定労働時間としています。
この時間を超えて働いた場合が「法定時間外労働」です。
法定時間外労働には、原則として25%以上の割増賃金が必要になります。
例えば、1時間あたりの賃金が1,000円の場合、1,000円 × 1.25 = 1,250円となり、1時間あたり1,250円以上の賃金が必要です。
ただし、ここで少し注意が必要です。会社で決めている「所定労働時間」を超えたからといって、必ず25%以上の割増賃金が発生するとは限りません。
法定内残業と法定外残業の違い
「会社で決められた勤務時間を超えた=25%以上の割増」と思ってしまいがちですが、法律上は必ずしもそうではありません。
例えば、会社の所定労働時間が1日7時間だったとします。
この場合、7時間を超えて8時間まで働いた時間は「法定内残業」となります。
一方、8時間を超えて働いた時間は「法定時間外労働」となり、原則として25%以上の割増賃金が必要です。
つまり、所定労働時間を超えた時間=必ず25%以上の割増賃金が必要、というわけではありません。
ただし、会社によっては、就業規則や賃金規程などで、所定労働時間を超えた場合(法定労働時間の範囲内)についても、割増賃金を支払うと定めている場合があります。
そのため、給与計算を行う際には、法定労働時間だけでなく、会社の就業規則や賃金規程なども確認することが大切です。
深夜労働
午後10時から翌午前5時までの時間帯に労働した場合は「深夜労働」に該当し、25%以上の割増賃金が必要です。
例えば、1時間あたりの賃金が1,000円の場合、1,000円 × 1.25 = 1,250円となります。
なお、深夜労働が時間外労働と重なった場合には、それぞれの割増率が加算されます。
時間外労働と深夜労働が重なった場合
時間外労働が午後10時以降の深夜時間帯に及んだ場合は、時間外労働の25%以上+深夜労働の25%以上となり、合計で50%以上の割増が必要となります。
例えば、通常の賃金が1,000円の場合、1,000円 × 1.50 = 1,500円となります。
「残業だから25%」だけではなく、深夜時間帯に働いているかどうかも確認する必要があります。
休日労働と深夜労働が重なった場合
法定休日の労働が深夜時間帯に及んだ場合は、休日労働35%以上+深夜労働25%以上となり、合計で60%以上の割増が必要です。
例えば、通常の賃金が1,000円の場合、1,000円 × 1.60 = 1,600円となります。
このように、複数の割増賃金が重なるケースは、給与計算で特に注意したいポイントです。
法定休日労働
労働基準法では、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えることが定められています。この法律上必要な休日を「法定休日」といいます。
法定休日に労働した場合は、35%以上の割増賃金が必要です。
例えば、1時間あたりの賃金が1,000円の場合、1,000円 × 1.35 = 1,350円となります。
ここで注意したいのが、「法定休日」と「所定休日」は同じではないということです。
例えば、会社が土曜日・日曜日を休日としていても、どちらが法定休日なのかによって、割増賃金の取り扱いが変わる場合があります。 「土日休みだから、土曜日も日曜日も休日労働の35%割増」とは限らないので、注意しましょう。
月60時間を超える時間外労働
1か月の法定時間外労働が60時間を超えた場合、超えた部分については50%以上の割増賃金が必要です。なお、以前は中小企業についてこの割増率の適用が猶予されていましたが、2023年4月1日からは中小企業にも50%以上の割増率が適用されています。
さらに、その時間外労働が深夜時間帯に及んだ場合には、時間外労働50%以上+深夜労働25%以上=75%以上となります。
そのため、月の時間外労働時間を把握する際には、60時間を超えていないかについても確認する必要があります。 なお、月60時間の算定には法定休日労働の時間は含まれません。
割増賃金に関するよくある質問
① 割増賃金は、何をもとに計算するの?
割増賃金を計算するときは、基本給だけをもとに計算するわけではありません。
原則として、通常の労働時間または労働日に対して支払われる賃金をもとに、1時間あたりの賃金額を算出します。
② 年俸制なら、残業代は必要ないの?
いいえ。年俸制だからといって、残業代が不要になるわけではありません。
年俸制であっても、原則として時間外労働・休日労働・深夜労働を行った場合には、割増賃金の支払いが必要です。
③ 固定残業代を支払っていれば、追加の残業代は必要ないの?
固定残業代(みなし残業代)を支払っている場合でも、固定残業代に含まれる時間数を超えて時間外労働をした場合などには、追加の割増賃金が必要となることがあります。
また、固定残業代が何時間分の時間外労働に対するものなのか、基本給などと明確に区分されているかなど、制度の内容を確認することも重要です。
「固定残業代を支払っているから、追加の残業代は一切必要ない」とは限りません。
おわりに
今回は、時間外労働・深夜労働・休日労働など、割増賃金の基本と計算方法についてご紹介しました。
割増賃金は、働いた時間帯や労働時間、法定休日に該当するかどうかなどによって、適用される割増率が異なります。
また、法定内残業と法定外残業の違いや、月60時間を超える時間外労働など、給与計算をするうえで注意が必要なポイントもあります。
正しい給与計算を行うためには、日々の勤怠を正確に把握し、会社の就業規則や賃金規程なども確認することが大切です。
割増賃金について「この場合はどうなるの?」など、疑問やお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。
植松なつみ
