基本給や手当が変わったら要確認!社会保険料が変わる「随時改定」って何? ~社会保険労務士事務所がわかりやすく解説~
投稿日:2026.10.25

社労士オフィスろーどの吉田です。
「社員の昇給があったけれど、社会保険料の手続きはどうすればいいの?」
「社会保険料は、いつから変わるのだろう?」
従業員の給与が変わった際、人事・労務担当者が確認したい手続きのひとつが、社会保険の「随時改定(ずいじかいてい)」です。
実務では「月変(げっぺん)」とも呼ばれます。「月額変更届」を年金事務所に提出して手続きを行うと、従業員様の給与額に応じた社会保険料へと改定されます。
今回は、随時改定の仕組みや必要となる3つの要件、具体例、よくある質問について、わかりやすく説明させていただきます。
社会保険の「随時改定」とは?
「随時改定」とは、昇給や降給などによって給与が大きく変動した際に、社会保険料の計算に使用する「標準報酬月額」を見直し、それに伴い毎月給与から控除する社会保険料等を変更する手続きです。
通常、標準報酬月額は、毎年4月・5月・6月に支払われた給与をもとに行う「定時決定」で見直されます。この手続きで提出する書類が「算定基礎届」です。
一方、年の途中で給与が変動し、一定の要件を満たした場合には、定時決定を待たずに標準報酬月額を変更します。
両者の違いをまとめると、以下のとおりです。

このように、定時決定は毎年行う定期的な見直しであるのに対し、随時改定は給与が大きく変わったときに行う臨時の見直しです。
社会保険の「等級」って何?
健康保険料や厚生年金保険料は、実際の給与額ではなく、「標準報酬月額」をもとに計算します。
標準報酬月額とは、基本給や各種手当などを含めた報酬月額を、一定の幅で区分したものです。この区分を「等級」と呼びます。
標準報酬月額を決める際は、基本給だけでなく、通勤手当や家族手当、残業手当なども原則として含めます。
【具体例】基本給20万円の場合、何等級になる?
次の給与体系の場合、報酬月額は209,000円です。
- 基本給:200,000円
- 通勤手当:4,000円
- 家族手当:5,000円
200,000円+4,000円+5,000円=209,000円(報酬月額)
この金額を標準報酬月額の等級表に当てはめると、標準報酬月額は200,000円となります。
下表に示した通り、健康保険では「17等級」、厚生年金保険では「14等級」に該当します。

※等級表は、加入する健康保険や適用時期などによって確認が必要です。実務では、最新の保険料額表を使用しましょう。
協会けんぽの場合は、以下をご覧ください。
👉令和8年度保険料額表|都道府県毎の保険料額表|保険料率|協会けんぽの事業|協会けんぽについて|協会けんぽ
このように、実際の給与額と標準報酬月額は必ずしも一致しません。
随時改定では、変更前後の標準報酬月額を比較して、等級にどの程度の差が生じたかを確認します。
随時改定が必要になる「3つの要件」
随時改定は、給与が変われば必ず必要になるわけではありません。原則として、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
①「固定的賃金」(基本給・手当・給与体系)が変わった
1つ目の要件は、基本給や各種手当などの「固定的賃金」に変動があったことです。
固定的賃金に該当するものとは?
固定的賃金とは、支給額や支給基準などがあらかじめ決まっている賃金をいいます。
主な例は次のとおりです。
- 基本給の昇給・降給
- 役職手当、家族手当、住宅手当などの変更
- 通勤手当の変更
- 日給制から月給制への変更
- 時給・日給の単価や歩合率などの変更
一方、残業手当や休日出勤手当などは、勤務実績によって変動するため、一般的には非固定的賃金に分類されます。
残業手当だけが増減しても、原則として随時改定のきっかけにはなりません。
ただし、次の要件を確認する際には、残業手当も含めた報酬全体を計算します。
②固定的賃金の変動があった月から、継続して3ヶ月間を平均して「2等級以上」の差が出た
2つ目の要件は、固定的賃金が変動した月から継続する3ヶ月間の報酬を平均し、従前の標準報酬月額と比較して原則2等級以上の差が生じることです。
【具体例】1月に基本給が昇給した場合
1月に支払われる給与から基本給が上がった場合、1月・2月・3月の報酬を確認します。
- 1月の報酬総額:240,000円
- 2月の報酬総額:250,000円
- 3月の報酬総額:230,000円
3ヶ月間の平均額は、次のとおりです。
(240,000円+250,000円+230,000円)÷3=240,000円
この平均額を標準報酬月額表に当てはめ、従前の標準報酬月額と比較します。

上記画像のように、原則2等級以上の差があり、ほかの要件も満たしていれば、随時改定の対象となります。
なお、判定に使用するのは基本給だけではなく、残業手当なども含めた報酬全体です。
③3ヶ月とも支払基礎日数が「17日以上」である
3つ目の要件は、変動後3ヶ月間の各月について、支払基礎日数が原則17日以上あることです。
支払基礎日数とは、給与計算の対象となった日数をいいます。
- 月給制・週給制: 原則として暦日数をもとに計算します。
- 日給制・時給制: 原則として実際の出勤日数をもとに計算します。
欠勤控除がある場合などは、給与体系や就業規則に応じて支払基礎日数を確認しましょう。
また、短時間労働者については、適用条件によって11日以上が基準となる場合があります。
3つの要件を満たしたら「月額変更届」を提出!
3つの要件をすべて満たした場合は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届」(月額変更届)を提出します。
例えば、1月に支払われる給与から固定的賃金が変動し、1月・2月・3月の給与で要件を満たした場合、改定後の標準報酬月額は原則として4月から適用されます。
つまり、変動後の報酬を初めて受けた月から数えて4ヶ月目に改定されます。
随時改定に関するよくある質問
①1月に基本給が昇給した場合、いつから保険料は変わりますか?また、いつまで適用されますか?
A. 原則として4月から新しい標準報酬月額が適用されます。
実際に給与から保険料を控除するタイミングは、会社の控除方法によって異なります。
- 当月控除: 4月支給の給与から変更
- 翌月控除: 5月支給の給与から変更
また、1月から6月までに随時改定された場合は、原則としてその年の8月まで適用されます。7月から12月までに改定された場合は、原則として翌年の8月まで適用されます。
②7月に「随時改定」(月額変更届を提出)をする場合、「定時改定」(算定基礎届)と重なりますが、どうすればいいですか?
A. 7月・8月・9月に随時改定後の標準報酬月額が適用される場合は、「随時改定」が優先されます。
ただし、固定的賃金が変動した月と、改定後の標準報酬月額が適用される月は異なります。算定基礎届の提出要否や記載方法については、日本年金機構の最新の案内を確認しましょう。
③通勤手当の支給額(運賃改定や定期券の購入期間変更)が変わっただけでも、「随時改定」の対象になりますか?
A. はい、対象になる可能性があります。
通勤手当は固定的賃金に該当するため、運賃改定や通勤経路の変更、定期券の購入期間の変更などによって支給額が変わった場合も、確認が必要です。
ただし、随時改定の対象となるには、ほかの要件も満たす必要があります。通勤手当だけの変更であっても、忘れずに確認しましょう。
おわりに
社会保険の「随時改定」は、基本給の昇給・降給だけでなく、通勤手当や役職手当などの変更によっても対象となる可能性があります。
ただし、給与が変われば必ず社会保険料が変わるわけではありません。固定的賃金の変動や3ヶ月間の報酬、支払基礎日数など、複数の要件を確認する必要があります。
また、固定的賃金が上がっても残業代の減少によって等級が下がった場合は、原則として随時改定の対象にならないなど、判断が難しいケースもあります。
「この給与変更は随時改定の対象になるのかな?」「月額変更届の提出時期や社会保険料の控除方法は合っているだろうか?」など、判断に迷うことや不安なことがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
吉田 早織




