日本は世界一の人口減少・高齢化社会に向かっています。自分のアンテナが敏感になったからか、外部環境の変化を感じるようになったからかはわかりませんが、昨年の年末からパラダイムシフトの波を実感しています。パラダイムとは、ある時期ある集団の中で、常識として認識されている「思考の枠組み」であり、これまで常識として認識されていた様々な事柄が大きく移り変わることが、パラダイムシフトと言われています。
その波を何となくの他人事から自分事として理解したことで気がついたことがあります。それは、私なんかよりずっと前にこの変化に気がつき、既に改革を始めている諸先輩方の存在です。いかに日常の生活の中で、小さな変化に気がつくことができるかどうか。これは特に組織の経営に携わるリーダーには欠かせない資質だと感じます。
当たり前のことですが、これだけ社会が大きく変化するわけですから、日本人はこれまでの働き方・考え方・生き方を変えなくては、豊かさや幸せを実感しにくくなります。しかし、時代の変化を感じ、自律的に変化をさせていくのは並大抵のことではありません。どうやって自らを変化させていけば良いか、そのヒントをデービット・アトキンソンさんの「日本人の勝算」から得ることができました。
この本には、これからはどんなパラダイムシフトが起きるのか、その中で日本が世界各国に負けない国として成長を続けるための方策が書かれています。外の目を重視し、118人の外国人エコノミスト等の論文やレポートに基づかれた論理的な提言から多くの気づきを得ることができました。
その中でも特に印象的だったのは、働き方・考え方・生き方を変えるためには大人の教育(トレーニング)が必要であるという点です。高知県工科大学がまとめた「日本における生涯学習の現状と課題」という論文によると、日本の25歳以上の学校(大学等)の通学率が2%であるのに対し、OECD(36国)の平均は21.1%であるとのことです。また、日本の生涯学習はカラオケ、茶道、将棋といった趣味の領域が多くを占めると言われています。
つまり、日本では教育は22歳までに受けるものという固定概念が非常に強く、行政や教育機関の大人の教育に対する投資は少なく、各企業に育成をお任せしてきた。そして、年々、企業も余裕がなくなり、人材育成への投資は確実に減少しているのが実情です。
私は、人は新しいことを学ぶことで変わることができると考えています。2030年には国民の82%が25歳以上になると予測されており、アトキンソンさんは、「子どもの教育についての議論も大切だが、日本は課題そのものを間違えている」と仰っています。
国が主導をしている働き方改革の目的は、労働者一人が生み出す価値である「労働生産性」を高めることです。労働生産性はこれまでのやり方を見直すだけで高められるほど簡単なものではなく、最新技術の活かし方を学び続けることが不可欠になります。これからの時代は、社会人が絶えず新しいことを学び続け、変わり続けることで日本の生産性を向上させ、世界に誇れる国づくりを目指す。その果敢にチャレンジする大人の姿勢を見ながら子どもたちが育つ。そのように考えると働き方改革とは、大人の教育改革とも言えるのではと思いました。
人材育成に携わる者として、これからも社会人が職場以外で効果的な教育を受けられる仕組みについて考えていきたいと思います。