言志四録から学ぶ③

投稿日:2022.05.15

言志四録(げんししろく)は、江戸時代に佐藤一斎先生が塾長として講義をする隙間の時間を使って約40年かけて書き上げられたと伝わります。言志四録が刊行されたのは1850年頃ですから、170年程が経過しました。

現代は「いかに働き、どう生きるのか」ということを、先人達から学び、真剣に考える機会はほとんどないように思います。言志四録は、複雑で生きにくい現代を生きる私たちに本質的な学びを与えてくれる書物だと思います。大変恐縮ながら今回も章句をご紹介させて頂きます。

章句

面は冷ならんことを欲し、背は暖ならんことを欲し、
胸は虚ならんことを欲し、腹は実ならんことを欲す。

頭が冷静であれば、判断に誤りがない。
背中が暖かければ、人を感化し動かすことができる。
心にわだかまりなく、さっぱりしていれば、人を寛大に受け入れることができる。
腹が据わっていれば、何があっても動じることがない。

所感

佐藤一斎先生が目指した理想の人物像が表現されています。恐らく、当時でさえ、このような生き方を実践できる人物は多くはなかったかもしれません。だからこそ、忠告の意味を込めて、このような章句が生まれたのではないかと思いました。

現代は子どものころからスマートフォンが身近にあり、多くの情報に囲まれた便利な生活をしています。江戸時代と比べたら物質的には各段に豊かになりました。
これだけ便利で豊かな時代になったにも関わらず、佐藤一斎先生が目指した理想の人物が育つイメージが湧いてきません。もしかすると、不便さや貧しさを感じながら生きていた江戸時代の人々の方が、精神的にははるかに豊かであったのかもしれません。

20代~30代の後輩達と話をする中で、物質的に豊かになりたいという方もいますが、それ以上に精神的な豊かさを求めるニーズが高まっていると感じています。お金はそれなりに稼げれば良く、それよりも「仕事のやりがい」や「人間関係」に悩みを抱えている方が多いです。
このような若い方々を教え導けるリーダーが、あらゆる組織に求められています。そのリーダーに必要な資質を、佐藤一斎先生が本章句で教えてくれていると捉えています。

外部環境の変化に合わせて生きるだけでは、私はリーダーにはなれないと考えています。日々の生活の中に精神的なトレーニングを取り入れるよう工夫をする必要があります。私はその工夫として、言志四録のような古書に学ぶことを取り入れています。なぜならば、時代を越えて伝わるということは、どれだけ周囲の環境が変わろうとも変わることがない「不変的な生き方の教え」が書かれていると考えているからです。

私も所属するF-designという団体で、若いメンバーで月に1度の読書会を開催しています。
どなたでも参加できますので、ご興味のある方はこちらをご覧ください。
稚拙な所感をお読み頂き、ありがとうございました。

大道和哉





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