療養・育児・介護等で給料が下がった場合の社会保険料の改定「標準報酬月額の特例改定制度」とは? ~社労士事務所がわかりやすく解説~
投稿日:2026.09.27

療養や育児、介護などを理由として勤務時間を短くしたり、時間外労働を減らしたりすると、これまでより給料が下がるケースがあります。
現在の社会保険制度では、給料が下がった場合、「月額変更届(随時改定)」を年金事務所に提出することによって、低下後の給料に応じて社会保険料も減額されます。
しかし、その場合であっても基本給や手当等の「固定的賃金の変動」があり、その後3か月間の給料を確認したうえで保険料が改定されることになります。
そのため、これまでの制度では、療養・育児・介護などを理由として勤務時間が減り、それによって給料が下がったとしても、基本給や手当等の「固定的賃金」が変動していなければ、保険料を改定することができませんでした。
「給料は下がっているのに社会保険料は下がらない」という状況になっている方が数多くいらっしゃいました。
そこで上記の状況を改善するため、2027年1月からは、療養・育児・介護などによって就労を調整し、給料が下がった場合に、通常の随時改定とは異なる「特例改定」が適用されます。
従来の制度では、給料変動後3か月間の期間が必要でしたが、特例改定の場合、給料変動後の翌月から社会保険料を改定することができます。
ただし、誰でも利用できるわけではなく、一定の要件を満たす必要があります。
特例改定の対象となる3要件

① 療養・育児・介護などのために「就労調整」をしていること
特例改定の対象となるためには、療養、育児、介護などの事情により、就労時間等を調整していることが必要です。
例えば、
・短時間勤務に変更した
・時間外労働を減らした
・勤務日数を減らした
などにより、実際の給与が減少した場合が考えられます。
単純に会社の都合や本人の希望によって給与が下がった場合などは、特例改定の対象とはならないので注意が必要です。
② 標準報酬月額が「2等級以上」下がり、3か月以上続く見込みがあること
標準報酬月額とは、社会保険料を確定させるために用いる、被保険者の毎月のおおよその月給を等級ごとに分類にしたものになります。
給料の減少によって、その標準報酬月額が「2等級以上」下がることが必要です。
ここで重要なのは、固定的賃金そのものが変更されたことだけを要件とするのではなく、実際の給料が減少していることがこの特例改定のポイントです。
また、減少が一時的なものではなく、3か月以上続く見込みがあることも必要となります。
③ 本人が書面で同意していること
特例改定を利用するためには、被保険者本人の同意が必要です。
そのため、会社側で任意の様式による同意書を作成し、本人から書面で同意を得ておく必要があります。
会社が一方的に特例改定を行うことはできません。本人への説明と同意の取得が重要です。
注意すべき「対象外」の主なパターン

特例改定には一定の要件があるため、主に次のようなケースでは対象外となる可能性があります。
①給与減額となった月の翌月に被保険者資格を喪失する場合
→退職などにより、給料が減少した月の翌月に社会保険の資格を喪失する場合は、特例改定の対象となりません。
②被保険者期間が給与減額となった初月を含めて3か月未満の場合
→社会保険の加入期間が短く、必要な期間を満たさない場合も対象外となります。
③給与減額となった初月に勤務実績がなかった場合
→給与が減少した初月について、勤務日数が0日の場合も特例改定の対象外となります。
特例改定によるデメリット
特例改定を利用すると、社会保険料の負担を早く軽減できるというメリットがありますが、一方で、以下のように注意しておきたい点もあります。
◾️将来の年金額に影響する可能性がある
社会保険料は標準報酬月額をもとに計算されます。
標準報酬月額が下がることで、将来受け取る年金額に影響を及ぼします。
◾️傷病手当金・出産手当金の額に影響する可能性がある
傷病手当金や出産手当金の支給額は、標準報酬月額をもとに計算されます。
そのため、特例改定によって標準報酬月額が下がった場合、これらの給付額に影響する可能性があります。
特例改定の詳細につきましては、以下のページを参照ください。
👉厚生労働省「療養、育児又は介護により報酬が急減した者についての健康保険法及び 厚生年金保険法の標準報酬月額の保険者算定の特例について」
おわりに
2027年1月からは一定の要件を満たすことで「特例改定」を利用でき、通常の随時改定より早く社会保険料を見直せるようになります。
社会保険料に関しては、顧問先事業所様からもお問い合わせを多くいただきます。関心が高い内容であることを日々感じています。
この度新設される特例改定は、これまでの制度に比べて早く社会保険料が更新されるため、給与が減少した方にとってはメリットのある手続きになります。
ただし、特例改定には対象となるための要件があり、本人の同意も必要です。
また、社会保険料が下がる一方で、将来の年金や給付金などに影響する可能性もあります。
制度の利用を検討する際は、メリットだけでなく、将来的な影響も含めて労使で確認することが大切となります。
特例改定に関わらず、社会保険等に関してご不明な点等がございましたら、お気軽に弊社へお問い合わせください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
千葉 佳汰
