医療費が高額になったときに活用できる「高額療養費制度」とは? ~社労士事務所がわかりやすく解説~

投稿日:2026.10.11

社労士オフィスろーどの大竹です。

病気やけがで入院したり、長期間の治療を受けたりすると、医療費が高額になることがあります。
その時に利用できるのが、健康保険の「高額療養費制度」です。

私たち社労士事務所は「医療費が高くなったのですが、高額療養費の手続きをしてください」「私は高額療養費の対象になりますか?」といったご相談や依頼をよくいただきます。しかし高額な医療費が発生したからといって、必ず高額療養費の支給対象になるとは限りません。
また、会社や社労士事務所が高額療養費の対象になるか等の確認・対応を行うことが難しいケースや、ご本人様が気付かないうちに、すでに高額療養費制度の適用を受けることができていたというケースも数多くあります。

安心して治療を受けるための重要な制度でありながらも、制度の内容や申請方法を知らない方が数多くいらっしゃると感じています。

そこで今回は、高額療養費制度の基本的な仕組みと、高額な医療費の支払いを病院窓口で抑える方法ついて解説いたします。

「高額療養費制度」とは?

高額療養費制度とは、医療機関や薬局等の窓口で支払う医療費の「自己負担額(原則3割負担)」が一定の上限額を超えた場合に、その超えた部分について健康保険から支給を受けることができる制度です。

自己負担の限度額は下表のように、「年齢」や「所得」などによって異なります。

出典:協会けんぽ https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/public_relations/009/002/index.html


(計算例)
・年齢:70歳未満
・標準報酬月額(月のおおよその収入額):28万円~50万円
・医療費:100万円
 → 自己負担の限度額は一定の計算により「約9万円」となります
 (2026年10月現在の計算式をもとに算出しています)

上記例の通り、「医療費が100万円かかったから、3割自己負担分の30万円を窓口で支払わなければならない」というわけではありません。
高額療養費制度により、医療費が高額になった場合、年齢・所得に応じて自己負担を一定額までに抑える仕組みが設けられています。

なお、高額療養費制度の「自己負担限度額」は、比較的頻繁に改定されます。また、各々の年齢や所得も変化していくものです。
「医療費をいくら支払ったら高額療養費の適用を受けることができるのか」という具体的な金額を覚え、自ら計算をするのは大変ですので、ここでは説明を割愛させていただきます。

※多くの方が加入している「協会けんぽ」では、高額療養費の目安を試算できるWebページを設けています。ぜひご活用ください。
👉 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/001/

高額な医療費の窓口負担を抑える2つの方法

医療費が高額になったとき、「高額療養費の申請を早くしなければ…」と考える方も多いと思います。

しかし現在は、特別な手続きをせずに病院窓口での支払いを自己負担限度額までに抑える方法もあります。高額療養費制度を利用して高額な医療費の窓口負担を抑える方法は、現在2つあります。

① 「マイナ保険証」を利用する

出典:デジタル庁 https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/494e7749-cb53-4bdd-aeeb-49c26d5edbf5/2a89902f/20240613_policies_mynumber_resources_leaflet_02.pdf

現在は「マイナ保険証」を利用することで、医療機関の窓口で自己負担限度額を確認してもらうことができ、特別な手続きをせずに高額療養費が適用される場合があります。

例えば、先に示した例の場合、医療費総額100万円、通常だと原則3割負担の30万円自己負担となる場合でも、マイナ保険証を通じて医療機関で限度額情報が確認されることで、窓口での支払いをあらかじめ「約9万円」までに抑えることができます。

以前までは、この後②で説明する「限度額適用認定証」の発行申請を事前に行い、それを医療機関等の窓口へ提出することが必要でした。
しかし2026年現在、多くの医療機関がオンライン資格確認を導入していますので、医療機関はマイナ保険証から高額療養費の適用に必要な情報を入手できるようになっている状況です。

オンライン資格確認に対応している医療機関等であれば、限度額適用認定証を事前に申請することなく、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられる場合があることを覚えておきましょう。

② 「限度額適用認定証」を医療機関に提出する

出典:協会けんぽ https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/001/index.html

マイナ保険証を利用していない場合は、「限度額適用認定証」を医療機関に提示することで、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることができます。

「限度額適用認定証」は、ご自身が加入している健康保険に申請することで交付を受けることができます。交付された後、認定証を医療機関の窓口に提出します。

なお、限度額適用認定証を利用せずに、いったん窓口で自己負担額を全額支払った場合でも、自己負担限度額を超えた部分については、後から健康保険へ「高額療養費支給申請書」を提出することで、高額療養費の支給を受けることができます。

※ 複数の病院にかかった場合は、あとから高額療養費が支給されることがあります

少し複雑な点になりますが、ここは高額療養費を利用するときに知っておきたいポイントです。

複数の医療機関や薬局を利用した場合、1箇所だけでみると自己負担限度額を超えていない場合でも、それぞれの医療機関での自己負担額を合算すると、高額療養費の対象になることがあります。

また、同じ病院であっても、「入院分」と「外来分」は分けて計算することになっています。

「マイナ保険証」や「限度額適用認定証」を医療機関に提出した場合でも、複数の医療機関等を利用したときは、後から高額療養費の申請が別途必要になることがあることも覚えておきましょう。

「高額療養費制度」に関するよくある質問

Q1.高額療養費は、「1か月分」の医療費で計算するのですか?

はい。
高額療養費は、原則として「1日から末日まで」の1か月(暦月)単位で計算します。

例えば、9月20日〜10月20日まで入院した場合、

  • 9月20日~9月30日 → 9月分
  • 10月1日~10月20日 → 10月分

として、それぞれ別の月として計算します。

そして、それぞれの月について、年齢や所得区分に応じた「自己負担限度額」の表に当てはめ、自己負担額が限度額を超えているかを確認します。

Q2.高額療養費の手続きは、会社や社労士にお願いすればよいですか?

高額療養費は、「健康保険」から支給される給付です。

そのため、基本的な手続きや支給については、「協会けんぽ」や「健康保険組合」等のご自身が加入している健康保険(保険者)に問い合わせるのが良いです。

会社の労務担当者様や社労士事務所に相談していただき、サポートを依頼することもできますが、「自分の場合、高額療養費の支給対象になるのか?」「申請が必要なのか?」「どのような書類が必要なのか?」といった具体的な内容については、加入している健康保険に確認するのが一番確実です。なお、健康保険に問い合わせる前に、まずは医療機関の窓口に相談してみるというのも良い方法です。

Q3.高額療養費制度の対象になるのは、病院に支払ったすべての費用ですか?

いいえ。
高額療養費の対象となるのは、原則として「保険診療」にかかる自己負担額です。

そのため、
・差額ベッド代
・入院時の食事療養費の自己負担額
・保険診療の対象とならない費用
などは、原則として高額療養費の対象外となります。

例えば、入院時に個室などを利用した場合に支払う「差額ベッド代」は、健康保険の自己負担とは別にかかる費用であり、高額療養費の計算には含まれません。
「病院に支払った金額=すべて高額療養費の対象」ではないことに注意しましょう。

おわりに

今回は高額療養費制度の概要と、お客様から普段いただくことが多い相談内容に関する解説をさせていただきました。

私自身は高額療養費制度を利用した経験はありませんが、お客様からご相談を頂くたびに、高額療養費制度の大切さを感じています。
ただでさえ病気や怪我により心身が不調な中で、医療費の部分まで不安を抱えながら日々を過ごすことは、当事者様にとって本当に辛い状況なのだろうとお察しします。
高額療養費制度には、今回ご紹介した内容以外にも様々な仕組みがあります。今回のブログで少しでも理解・関心を深めていただき、高額医療を受ける方の不安を払拭するものにつながれば幸いです。

なお、高額療養費制度は2026年8月に制度が見直され、「年間上限額」が新設されました。
さらに2027年8月からは、所得区分の細分化など、さらなる見直しが予定されています。

制度の内容は今後も変更される可能性がありますので、具体的な自己負担限度額や申請方法については、厚生労働省や加入している健康保険の最新情報をご確認ください。
社労士オフィスろーどは、今後も最新情報の発信に努めてまいります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


大竹 岳

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