「育児・介護休業法」2025年4月から変更となる9つの改正点 〜社会保険労務士事務所が分かりやすく解説〜

投稿日:2025.01.26

社労士オフィスろーどの大竹岳です。
今回は、改正が間近となっている「育児・介護休業法」について説明させていただきます。

2025年4月1日から変わる育児・介護休業法の9つの改正点

労働者がこれまで以上に男女ともに仕事と育児・介護を両立しながら、柔軟に働くことができるようになることを目的として、育児・介護休業法が改正されます。

2025年の「4月」と「10月」の2段階に分けて法改正が行われることになっています。
今回は、2025年4月1日に施行される以下の9つの改正点に絞って説明をさせていただきます。

<育児に関する4つの改正>
①「小学校3年生」を修了するまで、「子の看護等休暇」を取得できるようになる
②「小学校入学前」までは、養育者は残業(所定外労働)が免除になる
③ 短時間勤務が困難な「3歳未満の子を養育する労働者」は、「テレワーク」が選べるようになる
④ 育休の取得状況を公表する義務が「従業員300人超の企業」へと拡大

<介護に関する5つの改正>
⑤「勤務6ヶ月未満」の労働者も、介護休暇を取得できるようになる
⑥ 介護離職防止のために、「4つの措置」のいずれかを講じることが義務化
⑦「介護に直面した労働者」に対する「個別の周知・意思確認」の義務化
⑧「介護に直面する前の労働者」に対して、「早い段階での情報提供」の義務化
⑨「要介護状態の対象家族を介護する労働者」に対して「テレワーク」を可能にすることが努力義務化

「育児」に関する4つの改正

①「小学校3年生」を修了するまで、「子の看護等休暇」を取得できるようになる

※ 出典:厚生労働省「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」
 👉 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf
  • 現在は「小学校入学前」まで子の看護休暇の取得が可能ですが、「小学校3年生修了」まで休暇が取得できるようになります。
  • 現在は病気・怪我・予防接種・健康診断の際に子の看護休暇を取得することができますが、ここに「感染症を伴う学級閉鎖」と「入園・卒園式」が加わります。変更に伴い休暇の名称も「子の看護“等”休暇」へと変更となります。
  • 現在は6ヶ月継続して勤務していないと休暇を取得できませんが、これは撤廃されます。
  • 取得可能日数(1年間に5日、子が2人以上の場合は10日)に変更はありません。

②「小学校入学前」までは、養育者は残業(所定外労働)が免除になる

※ 出典:厚生労働省「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」
 👉 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf
  • 現在は、「3歳未満」の子を養育する労働者が申出をした場合に残業が免除となりますが、改正後は「小学校入学前まで」の子を養育する労働者へと対象が拡大されます。

③ 短時間勤務が困難な「3歳未満の子を養育する労働者」には、代替措置として「テレワーク」が選べるようになる

※ 出典:厚生労働省「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」
 👉 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf
  • 上記の代替措置メニューへの追加とともに、「3歳未満」の子を養育する労働者に対して「テレワーク」が実施できるよう環境整備に努めることが、事業主の義務(努力義務)となります。

④ 育休の取得状況を公表する義務が「従業員300人超の企業」へと拡大

※ 出典:厚生労働省「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」
 👉 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf
  • 現在は従業員が「1000人超の企業」が育休取得状況の公表義務の対象となりますが、改正後は「300人超の企業」となるため、公表義務が課される企業が拡大されます。
  • 「男性の育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」が、公表すべき内容となります。

介護に関する5つの改正

⑤「勤務6ヶ月未満」の労働者も、介護休暇を取得できるようになる

※ 出典:厚生労働省「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」
 👉 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf
  • 現在は雇用期間が継続して6ヶ月未満の労働者は介護休暇を取得できませんが、改正後は6ヶ月未満でも介護休暇が取得できるようになります。
  • 週の所定労働日数が2日以下の労働者は、雇用期間に関わらず介護休暇を取得することはできません。こちらは改正前後に変更はありません。

⑥ 介護離職防止のために、「4つの措置」のいずれかを講じることが義務化

※ 出典:厚生労働省「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」
 👉 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf
  • 介護休業の申出等がこれまで以上に円滑に行われるよう上記4つの措置のいずれかを講じることが義務化されると同時に、事業主は①〜④のうち複数の措置を講じることが今後推奨されます。

⑦「介護に直面した労働者」に対する「個別の周知・意思確認」の義務化

※ 出典:厚生労働省「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」
 👉 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf
  • 事業主は、介護に直面した旨の申出を労働者から受けた場合、上図に示されている事項の周知と意向確認を個別に行う義務が改正後は発生します。

⑧「介護に直面する前の労働者」に対して、「早い段階での情報提供」の義務化

※ 出典:厚生労働省「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」
 👉 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf
  • 労働者の介護休業や介護両立制度等の理解と関心を深めるため、事業主は上記の通り、労働者が介護に直面する前の早い段階(40歳になる前か後の1年間)に情報提供を行う義務が課されるようになります。

⑨「要介護状態の対象家族を介護する労働者」に対して「テレワーク」を可能にすることが努力義務化

  • 現在は介護のためのテレワーク導入の規定はありませんが、改正後は事業主に「要介護状態の家族を介護する労働者」に対してテレワークを選択できるようにする義務(努力義務)が課されます。

おわりに

冒頭に述べた通り、今回の改正はこれまで以上に労働者が仕事と育児・介護を両立しながら、柔軟に働くことができるようになることを大きな目的としています。

その背景には、日本の課題となっている「労働力不足」や「育児・介護を理由とした離職」「男性の育休取得率の低さ」などを解決したいという理由もあります。
その目的や背景を事業主・労働者ともに理解をして、4月の改正に向けて準備を進めていくことが重要です。

社労士オフィスろーどではお客様のサポートができるよう、引き続き法改正に伴う対応について調査を進めてまいります。
何かご不明点などがございましたら、お気軽にお問合せください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


大竹 岳

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